公衆電話から聞こえたエッチな声

あれは、確か私が小6の時だったから、今から18年程前の事です。


当時仲の良かった友達と近所の公園で遊んでいた時に、どんな理由かは忘れましたが家に電話を掛ける用事があって、友達と一緒に公園の近くにあった電話ボックスに入ったのですね。そしたらその電話機に黒いペンでとある電話番号が書いてありまして。他にもたくさん落書きされている訳ではなく、誰かがメモ代わりに書いたのか、緑色の電話機に7桁の番号が書いてあって。
なんだろうこれはと。何故だか分からないんですが、その番号が浮き立って見えて妙に気になってしまった小6の頃の私は、家に電話しなくちゃいけないのに、何故かその番号に掛けてみたんですね。なにコレなにコレと。好奇心先行で生きている子供らしさまる出しの行動ですがね。


プルルル〜と呼び出し音が鳴って、つながった瞬間のあの衝撃は今でも忘れられないです。


「ああ〜ん、あ〜ん…」


あえぎ声ですよ。いきなり。
いえ、正確には『あえぎ声』という概念すら知らなかった頃だと思うので、『なんかわかんないけど女の人のエッチな声』が聞こえたんですよ。


「なにコレッ!!!???」と、声には出さず、心の中で叫んですぐに電話を切りました。友達がそばにいましたから。
驚き、動揺しながらも、「どうしたの?」と訊ねる友達に、「ううん、なんでもないよ!」と答える私。
あの時、「なんかエッチな声が聞こえるよー。聞いてみなよ、○○ちゃん」とは言えなかったのは、聞いちゃいけないものを聞いてしまった後ろめたさがあったからでしょうか。
しかし、当時、初潮も来て性に目覚め始めてもいたような小学生の私にとっては、すんごい宝物を見つけてしまったような昂揚感とドキドキ感もあったわけです。


その後、ちゃんと家に電話したのかどうかは覚えてないんですが、その7桁の電話番号はしっかり記憶して、家に帰ってもう一度掛けてみたりするわけです。家族の寝静まった真っ暗な居間の電話機から、ドキドキしながら掛けてみたわけですよ。


すると、今度はあの『エッチな声』ではなくて、どうやらなにかのテープが流れているらしいという事が分かったんですが、女の人が普通に喋ってる声が聞こえるんですね。普通というか、エッチな事らしき内容なんですけど、「いんらんぱふぉーまんす」とか「めかくしふぁっく」とか「いんじょたい」とか、聞いたことのない単語が聞こえるんです。再びなにコレなにコレ! ですよ。
可愛らしい女の人の声で「めかくしふぁっく のどのおくまで」なんて言われたら、小6の私は「めかくしふぁっくって何? のどの奥まで何をどうするの?!」と想像しながら、漠然と「これはとってもエッチなことをするに違いない…」と考えて。(しかし具体的に何をするのかはまったく分からず…)


ずっと聞いていると、「あてなろまんすこーる」というタイトルコールみたいなものから始まって、アダルトビデオの作品の紹介をしているんだという事がだんだん分かってきましてね。


そうです。記憶にある方もいらっしゃるでしょうか? その『エッチな声』の正体は、アテナ映像が昔やっていた『アテナ・ロマンスコール』という新作案内の電話サービスだったのです。


このアテナ・ロマンスコール。
数週間ごとに内容が変わるんですが(もうこんなものを見つけてしまった事が嬉しくて、何日かおきごと聞いていましたもので)、ある日、なんだか分からないけどすごく惹きつけられる低い声の男性が、呪文のような催眠術のような言葉をこちらに投げかけてくるという不思議な内容の回がありまして。どんな事を話していたか記憶が定かではないのですが、聞く者を制御不能の解放感へと導くような内容で、それを聞いていた私はなんだか体が熱くなり、訳も分からないままむしょうにココロと体がムズムズとしだしてしまい、『エッチ』どころじゃない理解不能の不思議な感覚にさせられた事を覚えています。


その「惹きつけられる低い声」の男性は、誰であろう代々木忠監督だったのであります。


とまあそれが私の、代々木監督(アテナ映像)との出会いというかファーストインパクトというか、まあ忘れられぬ出来事なのであります。


その後、テレビの深夜番組で代々木監督の姿を拝見し、「ああ、この人があの声の主だ!」と感激し、またその何年後かにAVを観始めて、「ザ・面接」シリーズや、あの時、受話器越しに聞いた「いんらんパフォーマンス」「目かくしファック」「淫女隊」の作品群を観てまたまた衝撃を受け、さらにその数年後、「ザ・面接」の撮影現場にお邪魔する事になるなんて、人生とは何が起こるか分からないものだなぁと深い感慨が湧きますが、さらにさらに、来月の頭、私は代々木監督にインタビューさせていただく事になったのです! 
「ザ・面接」100本目記念のインタビュー(byビデオ・ザ・ワールド)なのですが、監督の「あの声」を目の前で聞けると思うと、今からもう緊張どころではないくらい緊張しているんですが、そんな私の感慨などはひとまず置いときまして、代々木監督が何を想い、考え、26年もの間、アダルトビデオを撮り続けてきたのか、是非聞いてこようと思います。