『ちゆりの制服バイブル』

とある役者さんが言っていた言葉なのですが、 「AVはカラミのシーンより、その前の安いストーリーの方がエロを感じて興味が湧く」と。ある意味分かってらっしゃるというか(決してAVを見下して言っている訳ではないと思うので)、粋なことを言うものだなと思ったのですが、ではその「安いストーリー」とは、一体どんなものを指して言っているのかと・・・


「奥さん・・・」
「やめてください・・・わたし人妻なの・・・」
そんな昼メロ的ドラマのことでしょうか?


もしくは、こんな作品も「安いストーリー」なのでしょうか?


『ちゆりの制服バイブル 松田ちゆり』 監督・安田健弘
('95年 宇宙企画


この作品は、まあタイトル通り制服・コスプレものですが、オムニバスではなく一本のストーリーものです。結構長い。80分位の長編ものです。



ストーリーは、一人の少女の18歳から20歳までの波乱の2年間の物語。看護婦を目指す真面目で奥手な高校生のちーちゃん(松田ちゆり)が、不良(て言葉も古いですが・・)の先輩と出会ってから人生が変わり始め、看護婦になったりバニーガールに転職したりするも、その先々で災難に巻き込まれ、ついには人殺しまで・・・
といった内容。まあいかにもAVらしいご都合主義な所もありますが、話しはちゃんと練られていて、松田ちゆりという女の子のキャラクターを生かした丁寧な作り方をされています。


高校時代のちーちゃんが先生と、映画「パルプフィクション」や「俺達に明日はない」の話しをするシーンがあるのですが、それはその後、どんどん破綻していくちーちゃんの人生への伏線でもあったのでしょう。


なにより「学芸会芝居」と言われていた松田ちゆりさんの、決して上手くはないけど一生懸命で、臭くもあり、クセがあり、でもそのクセこそが味になっているという(一般の女優さんの映画やドラマにはない)AVならではのアイドル演技というのが、私はすごく好きだったのです。その女の子の演技を見ているだけで楽しいという感覚。それを味あわせてくれるのが松田ちゆりさんという女の子だったのです。


そして、その魅力を最大限に生かして見せてくれるこの作品は、その役者さんから見たら「安いストーリー」かもしれないですけど、決して「安い作品」ではないなと思います。