『トリニティラブ 秋菜里子』

いまどきの、ではない、昔の宇宙企画が好きな人なんかにはストライクど真ん中な感じの、古典的な女子高生像にハマる秋菜里子という少女に、田舎のあぜ道ではなく、渋谷の街を歩かせる。


監督はアリスJAPANの人気シリーズだった『素人ギャルズ [LEVEL  A]』で、いい感じのギャルといい感じの距離感でLOVEではなくLIKEな感じのSex&ハメ撮りをしてたWATARUX(ワタルックス)。


表現力豊か、芝居達者な秋菜里子という逸材を得て、チャラ男代表みたいな(失礼!)あの軽〜い感じからは想像できないリリカルなドラマものを撮っていたWATARUX監督。正直意外な感じがしました。


映画『ラブ&ポップ』が作られたのが1998年。
その2年後、2000年にリリースされた作品です。
援助交際をモチーフにした物語はドラマや映画、AVでも、当時沢山作られていましたねぇ。


ゲーセンで時間をつぶし、用もないのに制服姿で街をうろつき、久しぶりに会った男友達とカラオケBOXでいちゃつきセックス。援交おやじにダマされ、超ラブラブな愛を誓い合ったボーイフレンドには結局性欲処理で利用されていただけだと知る・・・・
渋谷の女子高生を主人公に描かれるそんな最大公約数的な物語を、今作も忠実になぞって行きます。


驚いたのは、秋菜里子のモノローグで綴られる刹那的な世界観。
「アイやカナシミ そんな過剰な生体反応 絶対起こらない
必要なら記憶し 不要なら 記憶のマイクロチップから消去する」
それでもリセット出来ない痛みは
「傷がついていて そこにくるたびに音がとぶ CDみたいなもの」
と表現され、世界や他者との違和を抱えた少女の魂の救済的な物語となっていくこの展開に、当時の私は不覚にも感動してしまいましたよ。
こんな物語を、こんなシナリオを、誰かの小説の引用ではなく、WATARUX監督自身がが作り上げていたなんて、本当に驚きでした。


ルーズソックスをはくように、ポケベルを持ち歩くように、あの頃の女子高生たちは
「世界なんてどうせくだらない」
そんな退廃的な価値観を抱えていた、なんて括ってしまうのはヤボですが。。。


人間は全て断絶されていて他人の痛みなど絶対に分からない。
そんな真理を体現している彼女達が、そんな無常感や虚無感をぶっ飛ばしてくれる何か(大抵それは恋や愛ですが)を見つけ、世界を肯定し始めるまでの物語を、リリカルな心情モノローグで綴った力作、であると思います。



ちなみにトリニティとは「三位一体」の意味。
「私とあなたとこの世界」という意味なんでしょうかね?WATARUX監督?