『臨月美女のSEX ・出産 畑山夏樹』

先日、豊田薫監督(オペラ)の現場に行って参りました。


「なんだか訳ありな19歳の妊婦さんが身重の身体で中出しSEX」という世も末な撮影でありましたが、「別に妊娠も中出しも重大なことじゃないの〜」みたいなモデルさんの悲壮感のなさと、豊田監督のキャラクターのおかげで、深刻さのかけらもない、実に「アダルトビデオ」らしい現場でした。

このレポートは6月売りのビデオ・ザ・ワールドに載る予定ですので、よかったらチェックしてみて下さい。



豊田監督といいますと、私は「アダルトビデオジェネレーション」(東良美季著)でのインタビューを思い出します。
そこで語られていた「人間の持つ根源的な欲望」「掴もうとしても決して掴むことの出来ない現実への焦がれるような思い・焦燥感」というものに、そして豊田薫という人物に、言葉には言い表せぬ深い劣情を覚えた事を思い出します。


もうひとつ思い出すのは『口全ワイセツ 松本まりな』という(今から15、6年前の)作品で、松本まりなさんが加藤鷹氏にフェラチオしている所に「まりなちゃんおちんちん美味しい?」と訊ね、何故かカメラの前に現れて「ほんとに美味しい?」と自ら鷹さんのちんちんを舐めて確認(笑)していた姿です。松本まりなさんの引退作であった(と思います)その作品で、「結婚して幸せな家庭を作りたい」と涙を流しながら語っていた松本さんに、「偏狂的ファンのストーカー男にレイプされる元AV女優」役を演じさせていた監督の性悪っぷりも忘れがたいものがあります。


リア王、そして現在オペラと名を変え撮り続けている作品群、その作風を見るにつけ「一見優しげだけど、女に容赦のない鬼畜なスカトロ監督」というイメージも若干あったのですが、現場前に予習として観たこの作品を見て、その印象が変わりました。



『臨月美女のSEX・出産 畑山夏樹』(リア王)2004年

タイトル通り、21歳の妊婦さん・畑山夏樹さんという女性のセックスと自宅での出産風景が収録されている作品です。


笑うと目が細くなる人懐こい笑顔と屈託のなさ、おやっと思うほどの深爪(赤ちゃんを傷つけないようにでしょうか?)に、自分で入れたと思しき稚拙なタトゥー(?)が幼い雰囲気を漂わせながら、しかしすでに一児の母であり、現在も9ヶ月の我が子を身ごもっているという畑山さん。
母子家庭で育ってきたという逞しさと、「なんとかなる」という楽観的感覚。男という存在に流されながら父親のいない子を産むという、どこか淋しい影もあるのですが、そんなことを微塵も感じさせない強さがある。そんな女の子に見えます。


セックスは3回。 妊婦マニアの男(という設定の)保坂さん、帆足さん、花岡じったさんと、慎重に、かつ激しくガンガンやっております。人柄と同様の大らかなセックス&相手に対しての愛あるフェラチオは、見ていてとても頼もしい。色んな困難がありつつも自分を肯定出来ている畑山さんは、人生もセックスも前向きに捉えていて、そこが頼もしいです。


後半の出産シーンは、エロビデオにおいては別にいらないものなのかもしれません。でも、畑山夏樹という女の子の(セックスを含めた)人柄、生き様みたいなものが、あの最後の笑顔で伝わってくるんですよね。


豊田監督はこんな作品も撮っているのですねぇ。見れてよかったなあと思える作品でした。