『SとMと里菜子と故郷〜御自宅公開処刑FUCK〜』 

『SとMと里菜子と故郷〜御自宅公開処刑FUCK〜』 監督:松江哲明

こちらにてサンプルが視聴できます↓
http://www.pornograph.tv/main/index.html


なんとも物々しいタイトルですね。
昔のV&RやGASなどのレンタル企画系AVマニアの方なら、このサブタイトルを見て「主演モデルが実家へ帰郷し、両親の目の前でセックスを披露する」といったかつてのGASへのオマージュ(※1)的な、壮絶な修羅場を孕んだ内容を想像されるのではないでしょうか?
それほどまでに何かを期待させるような「煽る」タイトルであると思います。(と感じたのは私だけでしょうか・・・?)
しかし、中身は全然(?)違いました。


今作は、SMからアナルに獣姦までもこなしカルト的人気のあった元AV女優の平沢里菜子さん(23)を追ったドキュメント作品です。監督とふたりで彼女の生まれ故郷へと向かう旅と、同棲相手の恋人とのSMプレイ、そして日常が交互に映し出され「平沢里菜子」という、AV女優や元モデルという括りには収まらないひとりの女の子の生き様が露わにされていきます。


平沢さんはとにかくその綺麗で鋭く大きな目が印象的で、こちらの欺瞞や嘘を全て見透かすような真摯な力強さが宿った鋭く美しい目をしています。言葉よりも何よりも、まずその目が平沢里菜子という人の内面を物語っているような。


「その美貌で何でそこまで?!」と驚かされるようなハードコアなAVに出演し、「ビデオに出て救われた」と語る平沢さんの根底にあるのは、父親から受けたDVと世間体を気にして生きる父への反発であったのだと語られるのですが、「死んじゃえばいいのに」と思っていたという厳しかった父親との確執を語る時の一分の隙もない険しい目と、恋人と過ごす自宅での安心しきった生々しい表情の違いが面白い。


目を見張るのは、普段からしているという恋人との本格的SMプレイ。M字開脚の格好で手足を縛り、目隠しした上で、本物のナイフで女性器を愛撫し、ローソクで局部を真っ赤に染め上げた後、細い糸の付いた洗濯バサミで容赦なく大陰唇を挟み、その糸を足の親指に括りつけ「自分で開きなさい」という芸の細かいマニアな責め。さらにまた恥骨に直接ローソクを押し当て、アナルをロウで塞ぎ、お尻をスパンキング。そんな恋人(このSM編集者であるという彼氏の存在も面白いです。松江監督曰く「向井秀徳にそっくり」とのこと)の責めに、リアルな苦痛を滲ませながらもマゾヒスティックな歓喜の声を上げ、普段の女王様然とした気高い佇まいから一気にマゾの愉楽へと堕ちていく平沢さんの姿には、とにかく驚愕させられます。
ギャップが凄いとか、こんな人がここまでやるなんてとか、そういう種類の驚きではなく、その人の人生(の一部)を垣間見てしまった、という衝撃みたいなものがありました。


ここまで見せられたらもうその後のセックスはおまけみたいなものかもしれません。スローシャッターで撮られているのでここだけ生々しさを欠き、美しいけれどいやらしくはない性交シーンなのですが、興味深いのは、コンドームを装着する彼氏の姿がアップで映され、それに照れたような様子で笑う彼氏の声。これが妙にリアルなのですね。別にHでもなんでもない場面ですが、人間くさい生々しさがあって、なんかいいなぁと思ってしまう場面でした。


プレイ終わった後、クールに一服しながらも、至極満足そうに、なんかもう嬉しくてたまらないといった感じでデレデレ〜っと笑みが止まらない平沢さんがとても可愛らしいです。ちょっとツンデレっぽいところも素敵。なんかどことなく林由美香さんに似ている気もします。



「素人」がテーマのH−1グランプリで「元AV女優」ってありなのか?最初はちょっと疑問にも思いましたが、素人ものの醍醐味であると思われる「プロとして作られたものではない生身の女性の姿と欲望」を写し撮るという意味では、この作品は6作品の中でも抜きん出ているように感じます。



イベントの際、松江監督に話しを聞いた所、30分では収まりきらなかったエピソードなども他に色々あるそうで、これはまだ「平沢里菜子」を伝える途中経過作品なのだそうです。その辺のエピソードと、現在ピンク映画で活躍し評価されている平沢さんの今を追った続編(完全版?)は、是非見てみたいものだと思いました。



(※1 「GAS」という制作メーカーでは、監督やスタッフが何らかのけじめをつける為に両親にAV仕事をカミングアウトし、セックスまでも曝け出すという行為が十八番になっていました)