『毒舌AV女優と男42歳丸裸の旅』

今月20日に結果が発表されるドグマ主催のD−1クライマックス。
遅ればせながら、オーディションを見た時から気になっていたこの作品の感想を。


『毒舌AV女優と男42歳丸裸の旅〜単体女優・三津なつみと過ごした72時間〜』 監督:TENUN (「てんうん」と読むようです)


オーディションでの自己アピールの際、「セックス嫌いです」と言い放ち、業界への不満を饒舌に語っていた三津なつみさん。「そんな彼女に魅力を感じた」という監督は、予定していたスタジオでの撮影を直前になってキャンセルし、二人きりで2泊3日の旅に出かけます。


TENUN監督(爆笑問題太田光似の長身の男前です)はドグマ随一の巨乳好きであるらしく、撮られている作品も「巨乳」ものがメインな為、こういった自身が自ら女優さんとカラむドキュメント作品は初めてである模様。
オーディションにて三津さんを撮ると決めた監督を見て私は思いました。「気概のある人だなぁ」と。でももし通常の作品のように普通に男優を使って女優さんといいコミュニケーションとって、三津さんが本当に満足できるようなセックスが撮れたとしても、それってドグマ的には「プチTOHJIRO」みたいな感じでしかなく、作品的にも監督本人もこじんまりとまとまってしまうのではないかなあと。なのでこの二人旅という決断にはまず拍手を送りたい気分でありました。


しょっぱな、「三津さんが撮影初日に遅刻しておきながら謝りもせず逆ギレする」という、どっちかというとマイナスにも感じられる場面から作品は始まり、わがまま毒舌女優・三津なつみに振り回される監督がいて、しかし、三津さんの生まれ育った千葉〜恋人と同棲していたマンション〜監督の故郷である鳥取〜監督の自宅〜と旅が進むにつれ、そんなマイナスなど上回る彼女の魅力的な面が現われてくる。という風な内容なのですが・・・


自分をすり減らしてAV女優としての寿命を延ばすよりも、嫌なら嫌とぶっちゃけようとする三津さんの姿は痛快であるし、好感も持てます。三津さんの毒舌ぶりの根本には「自分が大切に扱われないことへの不安と不満」があるように感じるし、オーディションで言い放った「逆アピール」の数々も、あれはパフォーマンスや計算ではなく、「搾取されるのはもう嫌だ」という、本能から出てきた思いを口にしているのだと思うのですよね。


そんな三津さんに監督は不器用ながらも精一杯誠意を持って、自分も裸になって向き合おうとしている。
・・・しているんですが、その思いは充分伝わってくるのですが、受け止める度量がちょっとないような・・・てな感じもしました。


会話の中で「(デビュー時から現在まで、撮影内容が)ハードになっていくのも辛いよね・・・」との三津さんの言葉に、「72時間拘束されたりね(この作品のこと)」と返す辺り、42歳という年齢の割にはちとトンチンカンな器の浅さが見えてきてしまうし、「ブログのコメントとか見ると、こんなに三津のこと気にしてくれてるんだ〜と思えて嬉しくなる」「ケータイに着信もメールもないと、ああ今日は誰も私のこと気にしてくれてる人間がいなかったんだなあと思う」とひとりの女の子としての寂しがりやな素顔を見せる彼女に、「意外と人目が気になるというか、注目を浴びたいのだなと思った」というテロップを被せる監督に、男として人間としての気概は感じられません。


そんな監督は三津さんから半ば呆れ顔で「純情なカンジなのはいいけど、頼りないなあ」「素人童貞でしょ実は」と言われてしまい、三津>TENUN監督という主従関係が出来上がるわけなんですが、42歳なのにどこか童貞臭のするTENUN監督の天然ぶりと必死さが、結果として三津さんの女としての優しさや逞しさ、厳しく叱咤しながらも根本的には男を立てる女っぷりなんかを引き出していたりもするんですよね。


セックスの際の、「好物!」とばかりに巨乳だけでなく女体めがけて喰らいついていくその様は、監督自らが出演するだけの価値がちゃんとあるように思えますし(キスだけで即びんびんになっちゃうんですよ。その中二並の性欲は素敵です。憎めません)、旅館でビール飲んで酔っ払った三津さんから「監督として指示出したりしてるけど、自分自身のことになったら分かんないでしょ」と、監督としても男としても致命的なツッコミを入れられ、そこから反撃を繰り出す監督なんですが、このセックスはなかなか、いや、かなりいやらしかったです。
たとえ気持ち良くないセックスでも、撮影であるなら仕事であるなら「気持ちいい」と言わねばならないものじゃないですか。AV女優であるなら。
浴衣の帯で縛られて、自由の利かない状態でおまんこにローター突っ込まれて乳首を乱暴につままれて電マでクリトリス責められておしっこを漏らし、「こんなことされても全然気持ちよくないでしょ?」って言われてトローンとした目で「きもちくない」と答える三津さん。「気持ち良くても気持ちいいって言ったら負け」という状況が作られることで、M気質のある三津さんの嘘のない快楽が導き出されている。・・・ように見え、ここはちょっと興奮度高かったです。


最後、監督の自宅にて、部屋の明かりを落としテンピュールの枕がふたつ並んだベッドで抱き合うふたりのセックスは、それまでのふたりの主従関係が初めて取っ払われたかのような対等な男と女のセックスとなっていて、それまでの流れを見ているだけに、その生々しさが格別です。
三津さんの日焼けあともなんだかいやらしくて良いし、TENUN監督も「あの童貞臭は何処へ?」と言いたくなってしまうくらい、最初とは全然違う自信を持った男のセックスに見える。


それってやっぱり三津さんのおかげなのだろうなあと。三津さんのツッコミによって「頼りないけどひたすら真剣。どこか童貞っぽい」という監督のキャラが立っていましたし、D−1の第2回開催記者会見の場で、特攻服姿で勝利宣言をされていたTENUN監督には、ドグマの社員監督として自分のカラーを出してのし上がって行かなければという気合と気負いを感じるのですが、三津さんの毒舌ぶり・監督イジリがそんな風に虚勢を張って生きていかなきゃいけない男の心の荷物を下ろし、励ましていたように見えるんですよ。女が及ぼす男への力って偉大だなぁと、そんなことが窺えたりもする作品なのでした。


と、肯定的意見で終わろうと思ったのですが、私が個人的にどうしても気になってしまったことを最後にひとつ。
ビデオの冒頭、三津さんのブログに載っているプロフィール写真に「彼女と出会ったのは〜」」とテロップが出て作品は始まるのですが、ここに私はちょっと疑問を感じちゃいます。3日間一緒に過ごして「三津なつみ」に触れて彼女を感じたのなら、こんな他人の撮ったプロフィール写真ではなく、どんな表情であれ自分の目で見た「三津なつみ」で作品を始めたらいいのに、と。