【木下的】D−1作品ベストテン!【独断と偏見】

前回の続きです。


有り難いことに、今回のD−1に審査員として参加させていただきました私・木下の【極私的D−1ベストテン】と、各作品の感想を勝手に綴らせていただきます。
独断と偏見のベスト10です。(全11作品なので正確にはベスト11ですね)



1位 『MURANISHIドラッグ』
期待を裏切らない面白さでした。男を主役に置きながらも、野々宮りんという女の子のいびつさ、可愛らしさ、人間味がきちんとこちらに届いてきました。村西とおるという偉人の健在ぶりと現代のAVとのズレをシニカルな視点で描き笑わせてくれながらも、深いメッセージがそこには籠められていました。村西>望月>山下という監督ヒエラルキー(男としての能力の高さ)を見せる三段落ちで終わるかと思わせながら、最後に村西氏の老いという切ない現実につなげた構成が見事でした。エロとペーソス。面白かったです。


2位 『グイコミ』
ちゃんと3人の女優の個性を生かす撮り方をされていると思いました。AVを頑張っている楓さんの主張を懐深く受け止め、「この子間違ってるよねぇ」と言うサバス監督に、監督として、男としての気概を感じました。背負い込んだ荷物を下ろし、素のままでの楓さんのセックスと表情が見れて良かったなと思いました。
(先日のイベントでのコメントによると、この作品の仕上がりを楓さん自身はご覧になっていないようですが、見られたらいいのにと思います)


3位 『毒舌AV女優と男42歳丸裸の旅』
TENUN監督の客観性のない言動やテロップなどに初めはアチャ〜と思って見ていたのですが、監督の頼りなさゆえに三津さんのタフさと私生活での共依存ぶり、どこかほっとけない可愛らしさが見れたので良かったのかなと。三津さんは魅力的でした。


4位 『僕と企画女優の生きる道』
すごい才能だと思います。あんなに非道なことをしておいて、それでも憎め(まれ)ないみのる監督のキャラは。女と対等な位置からなだめすかしながら、高みから見ている神様の視点で女を操っている。ふたりの関係は「AVギャル」と「女を騙して金を儲けるこの業界」の戯画化みたいです。女を下に見ているみのる監督の視点は最後まで変わらないので最後のオチにもグッとはきませんが、トドメの地獄のレイプを経験しながらも「行かないで」と言ってしまえる京本さんのMっぷり、タフさには唖然というか、アッパレでした。面白かったです。
(京本さんはこの作品に出て「簡単に人に騙されちゃいけないなと思った」そうです・笑)


5位 『ギャル☆魂』
芝居でありながらも、真鍋さん常夏さんそれぞれの素とセックスぶりが垣間見れる痴女パートの設定の巧みさが良かったです。プロレスという変化球&飛び道具で、現場ではプカプカ煙草吸って暇さえあればケータイいじって彼氏にメールしてそうなビデギャルからあれだけ真剣な表情を引き出したのは凄い。ラストのレズにあって欲しい高揚感がいまいち感じられないのが残念でした。


6位 『ふたなりレズビアンCLIMAX』
現場で見た時の興奮と面白さがビデオではあまり伝わってきませんでした。おまけ映像(撮影裏側の2人の素)を入れるなら、ナレーション撮りよりも、擬似ちんぽをつけた2人を見て盛り上がる女性エキストラの様子などを見せてくれた方が色々伝わったと思うのですが…。「女子高生ふたなり狩り」の、立花さんを責める大塚ひなさんの表情がすごく良かったです。


7位 『レズフィスト・ドラッグ』
フィストに愛がありました。女優さんと監督の信頼関係、撮影前後のケアの丁寧さが窺い知れる安心感と幸福感が画面から滲み出ていました。


8位 『達磨四重奏』
個人的にはまったく好きなジャンルではないのですが、丁寧に撮られていて好感が持てました。女優さん達の芝居、監督自ら出演のレイプ場面、大掛かりな仕掛けや責め道具の一つ一つに作り手の魂を感じました。


9位 『ザーメンをマンコとアナルでしぼり取るのが好きな痴女たち』
女優さん2人が発情したメスの顔をしていました。片時も休むことなく男を責め続けるコンビネーションの良さが見事でした。隙がないので入り込めず、個人的には一切興奮できませんでしたが…


10位 『アドリブ痴女トリプルドライブ』
ヤル気まんまんの女優3人と勃ちのいい素人男性を用意して、ヨーイスタートで撮っただけという印象でした。出演者の力量を信じすぎて(依存しきって)モデルさんの本気の欲情(発情顔が全部演技に見えてしまう)を発火させる策や空間作りがなされていないのではないかと。メイク・衣装はセンスが良くて、3人共スゴい美人に見えましたし、監督の女性の好みが良く分かりました。素人男性達は皆気持ち良さそうでした。


11位 『脳内麻薬』
「北風と太陽」でいったら北風みたいなAVでした。むりやりこじ開け開発された快楽に未来はないと思います。


[全作品を見た感想]
D−1という場で戦う為に得意技で勝負、みたいな作品よりも、D−1という場だからこそ生まれたもの・撮れた作品に魅力を感じました。作品を売る為にエロを強化した作品が多かったと感じましたが、だからこそAVならではの人間ドラマが見られた作品に惹かれました。次回のD−1の傾向が気になるところであります。