私とビーバップ・みのるの生きる道?

2006年に観たAVの中で、ビーバップ・みのる監督の『僕と企画女優の生きる道』は、「すごい面白いんだけど、好きじゃない」という複雑な感情にさせてくれる、とても印象強い作品でした。
女の子と同じ目線で接しながらも、あんな風に簡単に騙されちゃうユルい京本かえでを心の中では常に見下して搾取している。そんな非情さを非情だと感じさせないみのる監督のあのフニャフニャ〜とした母性をくすぐるキャラクターが面白くもあり怖くもあり、なんとも凄い人が現われたなぁと畏怖していました。
面白いけど、好きになれない。気持ち的には私は「アンチみのる」派という感じだったのです。

けれど、何故だか気になるものがありまして、あんなにまっすぐな愛情を向けられても、それでも一切心は揺れていないのだとしたら、この人が心から信じられる他人の愛情ってどんなものなんだろう? と、みのる監督の欠陥人間ぶりと、底知れぬ虚無感みたいなものに興味をそそられたり。
また、ある雑誌でみのる監督が発言していた「観ていて嫌味になったり、女の子を見下すような撮り方をしないように気を付けている」「他のD-1作品を観て、ハードな内容に耐えられれば、女の子は誰でもいいんじゃないかと観ていて寒々しくなった。それで、カンパニー松尾監督の『パラダイスオブトーキョー』を急に観たくなって、観たら心が落ち着いた」という言葉がずっと心に引っかかり、この人は現場でどんな風に女優さんと接しているのだろう? どんな風に演出しているのだろう? ビーバップ・みのるって本当はどんな人なんだろう? と知りたくなったのですね。
と、そんな訳で、自ら希望してみのる監督の撮影現場に行かせて貰ったのが数日前。

そしていま私は、まごうことなきビーバップ・みのるのファンです(笑)
自分でもビックリなんですけど、別にみのる監督から甘い言葉を囁かれた訳でも、一緒に住もうよとか言われた訳でも、何かに騙されている訳でもないです。みのる監督の今回の撮影方法や作品に対する考え方は、そのまま、AVの撮影現場というものに対して私が思っていた疑問や違和感に対する真っ当で明確な答えのように感じられたんですね。

女優さんは、みのる作品への出演はこれで3度目となる翔田千里さん。
汁男優20人弱によるぶっかけシーンがあったのですが、翔田さんはザーメンを顔に浴びる度に、発射した汁男優さんの顔を見つめ「ありがとう」と一人一人に感謝の気持ちを伝えていました。それもごく自然に。
終わってOKが出た後も「ちゃんと顔見たかったな。イク時(汁男優さんの発射時)しか見れなかったから」「(撮影後の)挨拶行かなくていいの? さっき(始まる前に)挨拶して良かった」なんて言っていました。こんな女優さんもいるんですねぇ。この言葉を、あの場にいた汁男優さん全員に聞かせてあげたいと思いました。

みのる監督はあのルックスと話術でもって、ある種の(心に隙間のあるような)女の子ならば、簡単に自分の思い通りに出来てきたのだと思います。簡単に手に入るもの(女)を見下しながら、テキトーな相手とテキトーな付き合いしかしてこなかったのだろうなぁということは、『僕と企画女優の〜』を観ると安易に想像出来ます。
でも、そんなテキトーな生き方をしてきたみのる青年が、自分の思い通りにはいかない人間的魅力を持った熟女優さんに触れて、それまでの女性観やらなんやらをひっくり返されて、「人と真剣に向き合わなければ」と心の底から実感し、実践している。
そんなみのる監督の本気(マジ)な心意気が、今回の現場で伝わってきたように感じました。
なんとうか、正しい男の子(というにはみのる監督、結構いい年ですが)の成長物語じゃないかと思ったのです。井浦秀夫氏の漫画『AV烈伝』のモデルに、ビーバップ・みのるを推薦したい! と思うほどに。